令和6年度化学物質規制対策(毒性発現予測システムの活用促進に向けた課題等の調査)報告書
報告書概要
この報告は、AI-SHIPS(毒性発現予測システム)の行政利用促進に向けた課題調査について書かれた報告書である。従来の化学物質安全性評価は動物実験に依存していたが、高額な費用と時間、動物福祉の観点から、化学物質の構造から毒性を予測するQSAR(定量的構造活性相関)などの代替手法が開発されてきた。しかし、これらの手法は毒性発現機序との関連性が明らかでないブラックボックス的な課題があった。AI-SHIPSは毒性情報に加えて毒性発現機序情報も提示可能な革新的システムとして開発されたが、開発事業の終了時評価において、継続的な管理・運用体制の整備、国際展開、将来の行政利用に向けた取り組みが必要と提言された。OECDでは2003年からQSAR専門家グループによるQSARの行政利用推進活動が開始され、2008年にはQSARツールボックスが開発・公開され、AI-SHIPSの普及や行政受け入れには同ツールボックスへの搭載が有効なステップと考えられている。JaCVAMでは2022年度にAI-SHIPSの第三者評価を目標とした資料編纂委員会が設立され、2023年から活動を開始している。本事業では、これらの背景を踏まえ、AI-SHIPSシステムの信頼性を論理的に説明するための情報整理を実施した。具体的な実施内容として、QMRF(QSAR Model Reporting Format)の作成、JaCVAM資料編纂委員会で用いる資料の作成・説明・質疑応答対応、化審法における反復投与毒性試験結果が公表されている化学物質等について10件程度の事例を抽出し、AI-SHIPSによる予測結果と実試験結果の比較分析を行い、将来の行政利用に向けた活用方法を提案した。