令和6年度エネルギー需給構造高度化対策に関する調査等事業(電力業界の経営分析及び中長期の資金調達・投資環境のあり方等に関する調査)調査結果報告書

掲載日: 2025年5月27日
委託元: 経済産業省
担当課室: 資源エネルギー庁電力・ガス事業部電力基盤整備課
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令和6年度エネルギー需給構造高度化対策に関する調査等事業(電力業界の経営分析及び中長期の資金調達・投資環境のあり方等に関する調査)調査結果報告書のサムネイル

報告書概要

この報告は、令和6年度のエネルギー需給構造高度化対策における電力業界の経営分析及び中長期の資金調達・投資環境のあり方について書かれた報告書である。

本調査は有限責任監査法人トーマツが資源エネルギー庁電力基盤整備課に対して実施した包括的な分析であり、大手電気事業者の経営状況、国内外の資金調達環境、海外電力政策の動向を多角的に検証している。

国内電力業界の現状として、各電力会社のセグメント区分は各社各様となっており、営業利益率は燃料費調整制度があるにも関わらず燃料市況の急激な変動により不安定である。東日本大震災、電力全面自由化、ロシアによるウクライナ侵攻といった外部要因が業界の収益性に大きな影響を与えている。投資キャッシュフローは一定規模を維持しながら増加傾向にあるが、フリーキャッシュフローはマイナスとなる年度も多く、有利子負債は増加傾向で債務償還年数も10年水準で推移している。

脱炭素化の進展に伴い、金融機関のファイナンス環境にも変化が生じている。PCAFによるFinanced Emissionsの計測により、GHG排出量の多い企業への融資において貸し渋りが発生する可能性がある。トランジション・ファイナンスの残高に対するGHG排出量もFE計測の対象となるため、金融機関はトランジション関連セクターへの融資に消極的になる誘因が存在する。

海外の電力事業者の戦略として、再エネを拡大していく方針であるが、足元ではガス火力を重要電源として位置付け、中長期的に水素発電等により脱炭素化する予定である。英国、ドイツ、米国ともに石炭火力の段階的廃止を進めながら、ガス火力を再エネの調整力として活用し、原子力の継続的稼働や再エネ発電容量の大幅拡大を計画している。

諸外国では電気事業を対象とするファイナンス制度が複数存在し、イギリスのNational Wealth FundやGreat British Energy、ドイツのKWSG、アメリカのTexas Energy Fundなど、各国の政策目標に応じた支援制度が整備されている。これらの制度は再生可能エネルギーの導入促進や原子力発電の継続支援、水素発電の開発支援などを目的としており、電力業界の脱炭素化と安定供給の両立を図る重要な政策手段となっている。