令和6年度中小企業実態調査事業(中小企業の価格転嫁状況を把握する指標開発のための調査・分析)調査報告書

掲載日: 2025年5月27日
委託元: 経済産業省
担当課室: 中小企業庁事業環境部調査室
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令和6年度中小企業実態調査事業(中小企業の価格転嫁状況を把握する指標開発のための調査・分析)調査報告書のサムネイル

報告書概要

この報告は、中小企業の価格転嫁状況を把握する指標開発について書かれた報告書である。デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社が令和6年度中小企業実態調査事業として実施し、企業間取引における価格転嫁の状況を定量的に捕捉する指標の開発とその分析を行った内容となっている。

本事業では、原材料価格上昇や人件費上昇に対処するため価格転嫁の重要性が高まる中、現状では企業間取引価格を捕捉する統計データが少なく価格転嫁状況の把握が困難であることを背景として、業種別および企業規模別の価格転嫁指標開発を目的とした。先行研究を踏まえ、公的統計から推計した「マークアップ率」と、日銀短観の販売価格DI・仕入価格DIをカールソン・パーキン法により修正して推計した「付加価値デフレーター」の2つの指標を開発している。

マークアップ率については、販売価格と名目限界費用の比として定義され、生産の弾力性を中間投入比率で割ったものとして計算される。付加価値デフレーターは、販売価格変化率から仕入価格変化率に中間投入比率を乗じたものを引き、さらに付加価値比率の逆数を掛けて算出される。推計には企業活動基本調査、法人企業統計調査、中小企業実態基本調査の財務データを活用し、従来の先行研究では十分に捕捉できていなかった中小企業や非製造業のデータを反映させた。

開発した指標による分析では、価格転嫁の実現状況が設備投資や賃金に与える影響について定量的分析を実施した。その結果、政府が目標とする「賃金と物価の好循環」実現にはマークアップ率向上が重要であることが示唆された。また、マークアップ率の分布分析、利益率との関係、設備投資との関連、生産性当たり賃金との関係についても詳細な検討を行っている。今後の活用に向けて、本事業で開発した指標は公的統計を活用しており、中小企業庁が継続的に更新可能な仕組みとなっている。