令和6年度「技術開発調査等推進事業(Techno-Economic Analysis等の技術開発事前評価手法の調査)」調査報告書
報告書概要
この報告は、日本における研究開発の効率化を目的として、技術経済評価(TEA:Techno-Economic Analysis)という技術開発事前評価手法の導入について調査・分析した報告書である。
TEAとは、技術開発の初期段階から経済性を客観的に評価する分析フレームワークであり、従来の実現後評価とは異なり、技術開発段階から生産コストや投資収益率などの経済指標を試算できる点で革新的である。この手法は、評価目標の設定、技術評価、インベントリ、経済的評価、感度分析の段階を経て、研究開発の各段階に応じて反復的に分析を行うものである。
米国を中心とした海外におけるTEAの活用状況調査では、大手企業、大学、スタートアップなどの技術開発主体に加え、政府機関やベンチャーキャピタルが関与し、これらの間で技術開発実現の蓋然性や経済性を可視化する共通言語として機能していることが明らかとなった。特に脱炭素技術や宇宙開発などハードテック領域での研究開発において、投資・補助金供与のインパクト最大化のため欧米諸国で注目されている。
日本の研究開発における課題として、人員や資金の偏り、収益性の不透明さ、市場化を見据えた開発の停滞が存在する。TEAは長期的事業の見通し提供と客観的技術評価による機関間のリソース連携により、これらの課題解決に寄与すると考えられる。ただし、日本では米国と比較してディープテックやGXスタートアップのエコシステムが未成熟であることから、現状の研究開発および資金供与の主体である大企業へのTEA実装が有効な導入方向性となる可能性がある。
政府による導入手法として、ガイドライン作成・周知、補助金供給時の義務付けや推奨、政府研究機関によるTEA実施、データベースおよびツール開発、人材育成、専門コンサルティング事業の育成などが提案されている。特に、海外でのリソース蓄積が進んでおり実現可能性が高く、政府のGX分野政策とも親和性の高いGX技術分野を初期の取り組み対象として推奨している。
