令和6年度 技術開発調査等推進事業バイ・ドール制度の国際比較調査報告書

掲載日: 2025年6月9日
委託元: 経済産業省
担当課室: イノベーション・環境局研究開発課
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報告書概要

この報告は、バイ・ドール制度の国際比較について書かれた報告書である。令和6年度の技術開発調査等推進事業として、野村総合研究所が実施した調査であり、米国、ドイツ、フランス、英国、シンガポールの5か国を対象として各国のバイ・ドール制度および類似制度の特徴と運用実態を把握することを目的としている。

1980年に米国で制定されたバイ・ドール制度は、日本でも1999年に導入されたものの、その後の大規模な見直しは限定的であった。一方、米国では1984年、2000年、2009年、2023年と複数回の改訂が実施されており、日本においても社会経済の変化に合わせた制度改訂の必要性が示唆されている。特に、経済安全保障の重要性の高まりや国際情勢の変化に伴う技術流出リスクの増大、デジタル技術の急速な進歩やオープンイノベーションの台頭といった新しい動きが背景となっている。

調査では、各国の制度の基本構造、外国企業への技術流出防止策、国家安全保障に関連する研究の取扱い、産学連携の状況、研究成果の商業化動向などを詳細に分析している。公的資金の提供に関する法的枠組みについて、日本では財政法第九条により国の財産を譲渡する際に適正な対価を求めているが、他国では明確に対価を求める記述は見当たらず、公共利用や目的に沿った利用を求める規定となっている。

特許権の帰属については、日本では慣習的に国に帰属させていたが、米国ではバイ・ドール制度に従い受託者が特許権を所有することが一般的である。ドイツ、フランス、英国、シンガポールでは発明者保護をベースとして発明を行った機関に帰属することが多く、国に帰属させる考え方は一般的ではない。これらの国際比較により、経済安全保障とイノベーション促進の両立に向けた政策立案に有用な知見を提供している。