令和6年度燃料安定供給対策調査等事業(CCSバリューチェーン産業政策調査)最終報告書

掲載日: 2025年6月10日
委託元: 経済産業省
担当課室: 資源エネルギー庁資源・燃料部燃料環境適合利用推進課
元の掲載ページ: 掲載元を見る
令和6年度燃料安定供給対策調査等事業(CCSバリューチェーン産業政策調査)最終報告書のサムネイル

報告書概要

この報告は、CCS(二酸化炭素回収・利用・貯留)バリューチェーンにおける産業政策について書かれた報告書である。三菱総合研究所が資源エネルギー庁の委託により実施した令和6年度の調査事業の成果をまとめており、国内事業者が競争優位性を持つCCS関連サービスの特定と市場分析を行っている。

調査では、CCSバリューチェーンを分離・回収、輸送、貯留、モニタリングの4つのプロセスに分類し、各段階におけるサービス内容を詳細に整理した。分離回収分野では化学吸収法、固体吸収法、膜分離法による設計から運転保守まで、輸送分野では海上輸送とパイプラインによる建設から廃止まで、貯留分野では帯水層貯留と油ガス田貯留のサイト選定から圧入まで、モニタリング分野では光ファイバー計測や弾性波探査による監視システムの設置から撤去までのサービスを体系化している。

優位性評価の結果、国内事業者が強みを持つサービスとして、分離回収分野のEPCサービスとライセンスサービス、輸送分野のパイプラインEPC・運転保守サービス、LCO2ハンドリングシステムライセンス、海運サービス、貯留分野の圧入・受入設備EPCサービスと帯水層圧入運転保守サービスが抽出された。これらサービスの累計世界市場規模は2030年約12兆円、2040年約36兆円、2050年約59兆円と推計され、特に分離回収EPCサービス、ライセンスサービス、海運サービス、貯留EPC・運転保守サービスでは2050年までに各々約1兆円以上の市場獲得が見込まれる。

産業成長における課題として、分離回収分野では吸収液製造能力とEPCサービス体制の確保、輸送分野ではパイプラインや船舶の生産能力不足、貯留分野では耐CO2パイプ製造設備への投資と実績重視のサービス分野でのビジネスモデル構築が重要である。また、既に高シェアを持つ技術では市場拡大に備えた生産設備投資、実証段階技術では先行者利益獲得のための投資が必要とされている。さらに、個別技術支援に加えて国としてのビジョン明確化とCCS事業環境整備が企業の投資判断において重要であり、これらを並行実施することが早期産業成長に繋がると結論付けている。