令和6年度産業保安等技術基準策定調査研究等事業(高齢者関連製品の誤使用等事故対策検討事業)調査報告書
報告書概要
この報告は、高齢者関連製品の誤使用等事故対策検討について書かれた報告書である。超高齢社会である我が国において、高齢者の製品事故は重大な課題となっており、特に加齢による身体・認知機能の低下が誤使用・不注意に起因する事故の発生に影響している。本事業では、高齢者の行動特性を十分に配慮した規格の策定を念頭に、身体関連データの取得・整備を目的として実施された。研究では三つの主要な取り組みが行われた。第一に、高齢者の身体保持特性に関するデータ計測である。下肢筋力が低下した高齢者が立ち座り動作で無意識にテーブル等を支えとして利用する特性を踏まえ、手をつくエリアの摩擦素材の違いによる立ち座り動作や段差昇降時の姿勢保持補助具による重心動揺等のデータを取得した。計測では、テーブル面の素材変更、エッジ部突起物設置、段差環境における重心動揺計測を実施し、力センサ、脳波測定装置、グローブセンサ等を用いて多角的な分析を行った。第二に、除雪機における事故リスク低減の取り組みである。除雪機事故は毎年発生しており、デッドマンクラッチの無効化等の誤使用が指摘されている。実態調査とアンケート・インタビューを実施した結果、地面環境や積雪量、肉体的負担から「やむを得ず」誤使用している実態が明らかになった。センサによる人の位置検知対策も検討したが、根本的な使用時の課題解消が重要であることが判明した。第三に、高齢者行動ライブラリの活用促進である。企業・団体の登録件数は100件以上となり、広報活動により製品デザイナーや福祉製品関係者への周知を推進した。今後の展望として、高齢者の身体・認知機能変化に対応した製品安全分野の規格・基準整備が必要である。現状では誤使用事故として一括りにされているが、高齢者特性を考慮した安全機能や構造が求められる。階層的構造による基準体系の整備、メーカや業界団体との連携体制構築、評価方法や基準値の策定が課題となっている。
