令和6年度脱炭素推進国際会議実施・調査事業費(炭素国境調整措置含む各国の気候変動対策に係る調査・分析)
報告書概要
この報告は、EU炭素国境調整措置(CBAM)を中心とした各国の気候変動対策と炭素国境調整の動向について書かれた報告書である。
EU CBAMは世界初の炭素国境調整制度として2023年10月から移行期間が開始され、2026年から金銭的負担が発生する予定であったが、2025年2月に公表された簡素化案により2027年課金開始に延期された。制度の目的は、気候変動対策の強度差による国際競争上の悪影響を緩和し、炭素リーケージを防止することである。
英国は2027年にCBAM実施を決定し、豪州も排出量取引制度による国境調整実施を決定している。一方で新興国からは強い反発があり、特にインドはWTOでの提訴を示唆し、BRICS諸国と連携して一方的貿易措置への反対を表明している。
炭素国境調整措置は気候変動枠組条約に関連規定が存在するものの、WTOルールとの整合性については確立された解釈が存在せず、具体的な制度設計に依存している。米国では2009年に議会で検討されたが廃案となり、現在はトランプ政権下で財務長官が関心を示している状況である。
制度の技術的側面では、排出量の計測方法として実測値と世界平均デフォルト値の選択肢があり、課金形態では四半期課金制度が採用されている。また免除規定として輸入金額や物量による閾値が設定されている。
インドは2070年までのネットゼロ目標を掲げ、国家グリーン水素ミッションや炭素市場構築を進めているが、EUのCBAMに対しては一貫して反対姿勢を維持し、国際法に反する一方的措置として批判している。
