令和6年度九州地域における洋上風力関連産業分野のサプライチェーン拡大を通じた再エネ基盤のレジリエンス強化・エネルギーの安定供給に向けた調査事業 報告書
報告書概要
この報告は、九州地域における洋上風力関連産業分野のサプライチェーン拡大を通じた再エネ基盤のレジリエンス強化・エネルギー供給の安定化を目指した調査報告書である。
洋上風力発電は2050年カーボンニュートラル実現の切り札として位置づけられており、風車製造から基礎製造、O&Mまでを含むサプライチェーン全体で約3万点の関連部品が存在する裾野の広い産業である。「洋上風力産業ビジョン」では国内調達比率を2040年までに60%にする目標が設定されている。
世界全体では洋上風力発電の新規導入が急速に加速しており、2025年には年間25GW、2030年には約50GWに到達する見通しとなっている。地域別では欧州と中国本土が中心であるが、今後はアジア地域での急速な市場拡大が見込まれている。特に浮体式洋上風力発電は2024年の59MWから2032年には8,150MWへと大幅な増加が予測されている。
九州地域は洋上風力の潜在的適地が多く存在し、長崎県五島市沖や西海市江島沖が促進区域に指定され、北九州響灘洋上ウインドファームが着工されている。九州経済産業局は2023年8月に「九州洋上風力関連産業ネットワーク」を立ち上げ、管内企業のサプライチェーン参入を支援している。
本調査では洋上風力関連産業の全体構造を整理し、調査開発、風車製造、基礎製造、設置、O&Mの各分野における取引構造と地域企業の参入可能性を分析している。九州管内企業に対するアンケート調査を実施し、参入状況や意向、課題、支援ニーズを把握した。
浮体式洋上風力発電については技術の高度化が進んでおり、セミサブ型、スパー型、TLP型などの諸類型が存在し、コスト削減に向けた技術開発が継続されている。また浮体式洋上風力関連産業の特許保有状況や官民連携スキーム、港湾整備の課題等についても詳細な分析がなされている。最終的に九州洋上風力関連産業サプライチェーンマップを作成し、地域企業の参入促進に向けた方策と九州管内でのサプライチェーン構築の方向性を提示している。