令和6年度エネルギー需給構造高度化対策調査等事業費(洋上風力の「地域受容性向上」により、「案件形成」の好循環を創出する広域/地域サプライチェーンの創出等に資する調査)報告書

掲載日: 2025年6月23日
委託元: 経済産業省
担当課室: 東北経済産業局資源エネルギー環境部資源エネルギー環境課カーボンニュートラル推進室・地域経済部企業成長支援課
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令和6年度エネルギー需給構造高度化対策調査等事業費(洋上風力の「地域受容性向上」により、「案件形成」の好循環を創出する広域/地域サプライチェーンの創出等に資する調査)報告書のサムネイル

報告書概要

この報告は、洋上風力発電を中心とした再生可能エネルギーの地産地消による産業振興について書かれた報告書である。

日本政府の2050年カーボンニュートラル宣言を受け、第7次エネルギー基本計画では2040年度に再エネを電源構成比4割から5割程度とすることが示されており、洋上風力発電は再エネ主力電源化の「切り札」として位置づけられている。しかし、地元企業を中核としたコンソーシアムによる海外メーカーや大企業との橋渡し機能の成功事例は秋田県内など少数にとどまっているのが現状である。

本調査では東北地域を主眼に、洋上風力関連産業への地域企業参入とマッチング課題、地域における再エネ電源活用、再エネ地産地消による産業振興の三つの観点から分析を行った。先行的なスコットランドとデンマークのコンソーシアム調査により、地元企業への支援としてマッチング機能が重要であり、専門家による支援やトレーニング提供が幅広く行われていることが判明した。国内外の企業ヒアリングからも、コンソーシアムのマッチング機能の重要性、地域を中心とした組織の望ましさ、言語や国際基準への対応支援の必要性が確認された。

地域新電力のUDAモデル開発について金融機関関与の可能性調査を実施し、セミナーアンケートから地域全体での再エネ発電所整備の支援や理解醸成の重要性が指摘された。卒FIT電源と地域新電力の連携に向けては、金融機関との定期的コミュニケーションの重要性が明らかとなり、今後は金融機関における再エネ投融資窓口の見える化が必要であると整理された。

再エネ地産地消による産業振興モデルとして「再エネ団地」の整備を提案し、需要家ヒアリングから経営コミット、立地、調達方針、電源構成、契約期間、電力価格が、発電事業者からは行政意向、立地企業構成、資金調達などが検討事項として抽出された。これらを踏まえて「中小規模需要モデル」と「大規模需要モデル」の二つの産業振興モデルを作成した。中小規模需要モデルでは中小工場等を誘致してオンサイトPPAや相対取引により再エネ導入を図り、電力供給事業者の設置が必要である。大規模需要モデルでは大規模電力需要家に対応するため行政による近隣再エネ電源開発支援と系統接続が重要となる。両モデルとも需要家、発電事業者、地方公共団体それぞれの再エネに向けた積極的取り組みが期待され、行政による制度的支援やインセンティブ付与が成功の鍵となることが示された。