令和6年度エネルギー需給構造高度化対策に関する調査等事業(低コスト手法普及拡大に向けた電線地中化工法の実現可能性等調査)報告書
報告書概要
この報告は、低コスト手法普及拡大に向けた電線地中化工法の実現可能性等調査について書かれた報告書である。
無電柱化推進計画に基づき、災害時の電柱倒壊による電力システム機能喪失を防ぐため、電線地中化のコスト低減を図る調査が実施された。従来の掘削を伴う地中化工法の課題を解決するため、掘削を伴わず地上に施設する工法について検討が行われた。
令和5年度には電技省令第20条に基づく安全性確認調査が実施され、地上施設工法における感電や火災のリスク・課題が整理された。暴露試験、ヒートサイクル試験、短絡試験、地絡試験などの各種試験を通じて、管路の常規使用温度、内部温度、凍結融解による影響、短絡電流の衝撃力、アークの噴出有無などが調査された。その結果、日本電気技術規格委員会においてJESC規格案が策定され、2024年8月に承認された。
今年度は一般送配電事業者の配電線路3路線において、JESC規格に記載する内容と合致する箇所について地上電線路施工設計を実施した。対象路線は山地の道路脇、登山道沿い、道路沿いの擁壁上部であり、それぞれ無電柱化予定距離と電柱削減予定本数が設定された。
施工設計を通じて発生した検討事項として、急傾斜地でのケーブル滑落防止方法、地盤面急変箇所の施設方法、固定力の強化方法、岩盤箇所への施設方法、管路等に関する必要固定力の計算、積雪による圧力算定などが整理された。また、占用料等の計算方法、施設後の設備保守方法、管路損傷時の補修方法についても検討が行われた。
高圧地上電線路は車両の往来が無く人が常時通行しない山地に施設される想定であり、従来の架空電線路や地中電線路と比較して災害リスクの軽減と国民負担の軽減が期待される。今後は各現場におけるJESC規格に基づく適切な施工設計により、電線地中化の低コスト化と普及拡大が図られることとなる。
