令和6年度新エネルギー等の保安規制高度化事業委託費(水素利用に関する規制の合理化・適正化に向けた課題調査)
報告書概要
この報告は、水素利用に関する規制の合理化・適正化に向けた課題について書かれた報告書である。2025年2月に公表された本報告書は、2050年カーボンニュートラル実現に向けた水素社会の構築において、水素のサプライチェーン各段階における保安規制の整備を目的として調査を実施した結果をまとめている。
報告書は主に四つの調査項目で構成されている。第一に、高圧水素導管の適合性評価に向けた課題等の抽出では、令和7年度から開始予定の技術調査に備え、過去の中低圧水素導管調査を参考に高圧水素導管における課題や評価項目を抽出し、令和12年を見据えた想定スケジュールを整理した。調査では国内外の高圧水素パイプライン整備状況を分析し、海外では総延長4500キロメートルの水素パイプラインが運用されているが、日本では1メガパスカル以上の高圧水素パイプラインは存在しないことが明らかになった。ASME B31.12等の海外規格を参考に、水素脆化リスクや材料評価方法、耐震性評価などの技術課題を整理している。
第二に、中低圧水素導管の適合性評価では、民間企業や関係団体から4件のヒアリング調査を実施し、水素輸送用樹脂配管、付臭代替手法、保全技術の高度化、高圧水素用バルブなどの新技術について技術基準への取り込み可能性を精査した。第三に、晴海水素事業の評価・検証では、2024年3月に開始された国内初の導管による街区への水素供給事業について、ガス工作物の仕様や保安体制を事例として取りまとめ、今後の事業者が参考にできる知見を整理した。
第四に、現行の検査要領や熱量等の測定・検査方法の水素関連設備への適合性検証では、関係業界団体やメーカーから5件のヒアリングを実施し、都市ガス用に設計された各種要領や測定・検査方法の水素設備への適用可能性を検証した。調査には東京大学、大阪大学、横浜国立大学、筑波大学の専門家で構成される委員会が設置され、非公開形式で評価が実施された。これらの調査結果は、今後の水素供給事業実施における適切な保安規制の在り方を検討するための重要な基礎資料となっている。