令和6年度燃料安定供給対策調査等事業石油産業の現状と課題に関する調査分析報告書
報告書概要
この報告は、日本の石油産業の現状と課題について書かれた報告書である。日本の石油需要は構造的な減少が続いており、2023年度には1億5560万KLとなり、今後2028年度にかけて年平均2.9%の減少が予想される。製品別ではガソリン、ナフサ、軽油の需要減少が顕著である。円安によって石油製品の純輸入量が伸び悩み、原油輸入価格の上昇に対してガソリン補助金が支給されている一方、精製能力合理化により精製マージンは回復基調にある。
サプライチェーンでは物流の合理化が一巡し、2024年の航空燃料供給不足問題では人員不足が主因となった。製油所は2017年の高度化法対応により能力が大幅削減されたが、需要減少により稼働率は再び低下し、さらなる設備廃棄が進められている。製油所では事故やトラブルの発生が課題となっており、稼働信頼性の向上が求められている。
財務面では元売大手三社の売上高は回復しているものの、設備投資額は外資系企業と比較して限定的である。事業ポートフォリオでは石油精製業への依存度が高く、多角化は進んでいない。海外事業展開も限定的であり、国際競争力の観点では日本の製油所は小規模で稼働率が低いという課題を抱えている。
業界再編により元売は5社に集約され、各社はカーボンニュートラル目標を設定している。政策面では高度化法が過剰能力削減に効果を発揮したが、現在は脱炭素化やレジリエンス強化に重点が移行している。今後の政策課題として、石油需要減少と気候変動問題対応の両立、非化石燃料の導入拡大、製油所のグリーン化支援、既存インフラの有効活用が挙げられている。