令和6年度市場競争環境評価調査(米国における大企業とスタートアップ等の企業結合事例を通じたイノベーションへの影響に関する調査)調査報告書
報告書概要
この報告は、米国における大企業とスタートアップ等の企業結合事例を通じたイノベーションへの影響について書かれた報告書である。公正取引委員会が「イノベーションと競争政策に関する検討会」の理論的整理を踏まえ、キラー買収を含む大企業とスタートアップ等の企業結合事案におけるイノベーションへの影響評価を可視化するとともに、企業結合による効率性向上のロジックや考慮要素を明らかにすることを目的としている。調査では、米国連邦取引委員会の過去10年間の企業結合審査における執行事例169件を対象として、大企業とスタートアップ等の企業結合審査事案の概観把握を行った。次に、製薬等のディープテック分野とデジタルプラットフォームによるスタートアップ等の買収に関する個別事例12件を選定し、イノベーション影響評価、効率性向上のロジックや考慮要素の詳細な把握を実施した。年度別では2015年が最多の26件、業種別ではヘルスケアが78件と最も多く、年平均15件の企業結合審査事案が確認された。個別事例調査では、Broadcom Limited / Brocade Communications Systems Inc.、Abbott Laboratories / Alere Inc.、Illumina, Inc. / Pacific Biosciences、Meta Platforms, Inc. / Within Unlimited, Inc.などの事案について、競争への影響、技術へのアクセス、知的財産の保護、マージンの拡大といった観点から分析を行った。これらの調査結果は、オープンイノベーションに対する解像度を高め、よりイノベーションの促進に繋がり得る企業結合の在り方やそれを踏まえた政策検討への示唆を提供するものである。
