令和6年度化学物質規制対策「大学・公的研究機関と連携した化学物質管理高度化推進事業(化学物質のライフサイクルを踏まえた新規POPsや重金属の環境及び生態への影響評価)」調査報告書
報告書概要
この報告は、化学物質のライフサイクルを踏まえた新規POPs(残留性有機汚染物質)や重金属の環境及び生態への影響評価について書かれた報告書である。令和5年にストックホルム条約で新たに規制対象となったメトキシクロル、デクロランプラス、UV-328の3物質を中心に、化学物質の全球規模での移動による汚染状況の把握と将来予測、環境・生態系へのリスク評価が実施された。本研究では、大気化学輸送モデルCHASERとCMAQを用いて、POPsの環境中挙動を解析し、特にSPM(浮遊粒子状物質)をトレーサーとしてPOPs濃度の算出を行った。また、日本最南端の波照間島モニタリングステーションでのエアロゾル捕集により、新規POPs3物質と既存POPs8物質の大気中濃度測定を実施した。さらに、重金属についてはICP-MSによる濃度測定とX線吸収微細構造解析により、環境中での化学種変化と毒性変化を明らかにした。堆積物中のDNA解析を通じて、POPsの分解に関与する微生物の存在可能性も検討された。調査結果では、新規POPs中でUV-328のみが検出下限を超える濃度となり、HCBの大気中濃度は過去16年間でほぼ変化がないことが確認された。今後の展望として、IPCCの温暖化シナリオに基づいた将来予測の高度化、現地調査の強化、微生物分解の可能性評価が重要であると結論された。
