令和6年度化学物質規制対策「大学・公的研究機関と連携した化学物質管理高度化推進事業(下水道事業における化石炭素の把握・定量化とPRTR制度による連携)」調査報告書

掲載日: 2025年7月18日
委託元: 経済産業省
担当課室: 産業保安・安全グループ化学物質管理課化学物質リスク評価室
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令和6年度化学物質規制対策「大学・公的研究機関と連携した化学物質管理高度化推進事業(下水道事業における化石炭素の把握・定量化とPRTR制度による連携)」調査報告書のサムネイル

報告書概要

この報告は、下水処理場における化石炭素由来CO2排出量の推計手法開発について書かれた報告書である。PRTR制度による化学物質の下水道移動量データを活用し、下水処理場から発生する化石炭素由来CO2排出量の実態把握を目的とした研究が実施された。研究では三つの主要課題に取り組んでおり、第一に下水道区域メッシュを活用した流入量解析モデルの開発、第二に下水処理場での化石炭素収支解析モデルの開発、第三に全国レベルでの下水道部門からの温室効果ガス排出量推計値の更新である。下水道区域メッシュの生成プログラムでは、産総研水系暴露解析モデルを改良し、営業用水量の推計方法を昼間人口に基づく手法に変更し、小規模特定環境保全公共下水道への対応も強化された。化石炭素収支解析では、洗浄剤・化粧品等に該当する五物質を対象とし、水処理プロセスでの生物分解、大気への分配、下水汚泥への移行を推計できるモデルが構築された。物質収支解析により、最初沈殿池での汚泥吸着、生物反応槽での揮発・空気放散・生物分解、余剰汚泥への移行が定量化された。全国下水処理場2596施設を対象とした温室効果ガス排出量推計では、化学物質の生物分解による CO2排出量が199キロトン、汚泥含有化石炭素からのCO2排出量が化学物質由来58キロトン、プラスチック粒子由来15キロトンと算定され、化石炭素由来CO2排出量の総計は273キロトンとなった。非エネルギー起源温室効果ガス排出量は2577キロトンCO2換算で、総排出量の43パーセントを占めることが明らかになった。今後の課題として、PRTR制度下515物質での化石炭素原因物質の検討、流入量が大きい下水処理場の特定による地域特性把握、汚泥資源化施策の検討が挙げられている。