令和6年度化学物質規制対策「大学・公的研究機関と連携した化学物質管理高度化推進事業」化学物質の魚類中体内動態と代謝酵素分画によるin vitro分解との相関 調査報告

掲載日: 2025年7月18日
委託元: 経済産業省
担当課室: 産業保安・安全グループ化学物質管理課化学物質リスク評価室
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令和6年度化学物質規制対策「大学・公的研究機関と連携した化学物質管理高度化推進事業」化学物質の魚類中体内動態と代謝酵素分画によるin vitro分解との相関 調査報告のサムネイル

報告書概要

この報告は、化学物質の魚類中体内動態と代謝酵素分画による in vitro 分解との相関について書かれた報告書である。研究目的は、将来の生物を用いない化学物質蓄積評価試験の確立に寄与するデータを構築することであり、魚肝臓S9分画による化学物質分解と実際の魚体内化学物質動態の相関性を明らかにすることである。第一物質グループとして多環芳香族炭化水素類(PAH類)のフルオレン、フェナントレン、ピレン、1-メチルピレン、ベンゾ[a]アントラセンを選定し、第二物質グループとして農薬類のフェノブカルブ、フェニトロチオン、イソプロチオラン、ベンチオカーブ、シマジン、オキソジアゾンを選定した。コイを用いた生物蓄積試験により、PAH類4種類と農薬類6種類すべてで蓄積が確認され、生物濃縮係数BCFssと排泄速度k2を算出した。ニジマス肝臓由来S9画分のタンパク質含量とEROD活性は市販品と遜色ない品質であり、PAH類について魚類の生物蓄積性試験結果とS9分画による分解速度との間に高い相関が確認された。具体的には、S9画分による分解速度とBCFssは逆相関関係、排泄速度とは正の相関関係であることが判明し、代謝酵素により分解を受けやすい化学物質は蓄積しにくく排泄も早いという関連性が明らかとなった。今後の課題として、ニジマスS9画分の国内入手困難性、魚類代謝能に最適化された試験条件の確立、他魚種S9画分調整法の最適化が挙げられ、コイ肝膵臓では信頼できるデータが得られなかった問題についても検討が必要である。本研究を通じて生物蓄積性評価試験をはじめとする化学物質評価や環境研究を担う人材育成も実施し、卒論テーマとしての提供や学生実験における生物蓄積評価に関わる題材の提供により学生の興味関心を高めることができた。