令和5年度中小企業等環境問題対策調査事業費(途上国における適応分野の我が国企業の貢献可視化事業)最終報告書
報告書概要
この報告は、途上国における適応分野での日本企業の貢献可視化事業について書かれた報告書である。令和5年度に経済産業省が実施した調査事業として、デロイトトーマツコンサルティングが受託し、気候変動適応ビジネスの活性化を目的として4つの主要な調査項目を実施した。第一に、適応グッドプラクティス事例集の拡充では、過年度の選定軸を踏襲しつつビジネス競争優位性を新規軸として検討し、全21社を新規掲載企業として選定して計56社の事例集を作成した。新規項目として「事業展開における苦労した点とその対応」を追加することで実践的内容を深化させ、「適応ビジネス・技術リスト」及び「国別技術リスト」をコラムとして作成した。第二に、国際協力スキームの活用実態調査では、緑の気候基金やアダプテーション・ファンドの採択プロセスを調査し、適応案件の89件が公共型プロジェクトであることが判明した。実施地域はアフリカ・アジア太平洋地域が多く、民間企業関与案件では早期警戒システムや農業関連が多いことがわかった。第三に、民間資金・投資促進検討では、国内金融機関や保険会社9社へのヒアリングを実施し、適応ファイナンスに対する積極的取り組みインセンティブが不足していることが明らかになった。見える化ガイドの認知・活用も不十分であり、政策的インセンティブ付与や普及策の必要性が確認された。第四に、適応ビジネス案件組成調査では、ベトナムでの農業分野案件組成を構想し、タイとの官民ワークショップを開催した。タイ側からは日本事業者の適応技術がタイに貢献可能との認識が示され、継続的なワークショップ開催への謝辞があった。全体として、適応ビジネスの推進には政府主導によるフラグシップ案件組成や段階的課題解決アプローチが必要であることが結論づけられている。
