令和5年度燃料安定供給対策調査等事業(モビリティ分野を中心とした国内液体燃料の需要見通し調査)報告書
報告書概要
この報告は、カーボンニュートラル実現に向けた国内液体燃料の需要予測と次世代燃料の供給可能性について書かれた報告書である。世界的なカーボンニュートラルの推進において、自動車、船舶、航空機等のモビリティ分野においても燃料の脱炭素化が急務となっており、バイオ燃料や合成燃料などの次世代燃料の早期導入が期待されている。しかし次世代燃料は環境価値が高い反面、化石燃料より高価であり、導入初期の供給量や消費量が限定的であることから、需要側と供給側双方から見た社会実装の予見可能性が低いという課題が存在する。
この問題に対応するため、運輸モデルとマクロ経済モデルを用いて国内液体燃料の需要見通しを算出している。運輸部門においては、旅客と貨物の2区分、自動車、鉄道、船舶、航空の輸送機関別4区分に分けて詳細な分析を実施した。自動車部門では保有台数、走行距離、燃費の要素を考慮し、新車燃費のトップランナー効果や次世代自動車の普及効果を適切に反映できる構造を構築している。マクロ経済モデルの計算では、政府の成長戦略との整合性を考慮し、内閣府の成長実現ケースに基づいて実質GDPを想定した。
輸送需要については、2035年度の旅客需要は新型コロナウイルス禍からの回復により増加するものの、人口減少やオンライン化の進展により2030年度より減少すると予測している。貨物需要では経済回復による生産拡大はあるものの、輸送効率化や石油需要減少などが影響し減少傾向となる見通しである。また次世代燃料の供給可能性については、国内産バイオ燃料と合成燃料の供給計画、元売り各社の取組状況、導入拡大における課題を整理し、海外での合成燃料生産ポテンシャルとコストについても分析している。これらの分析結果は、今後の合成燃料導入促進に向けた官民協議会における次世代燃料の導入量目標検討や政策立案に活用されることが期待されている。
