令和2年度産業標準化推進事業委託費(戦略的国際標準化加速事業:ルール形成戦略に関する調査研究(製品含有化学物質の情報伝達方式に関する調査研究))調査報告書

掲載日: 2021年4月14日
委託元: 経済産業省
担当課室: 製造産業局化学物質管理課
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令和2年度産業標準化推進事業委託費(戦略的国際標準化加速事業:ルール形成戦略に関する調査研究(製品含有化学物質の情報伝達方式に関する調査研究))調査報告書のサムネイル

報告書概要

この報告は、製品含有化学物質の情報伝達方式に関する調査研究について書かれた報告書である。

令和2年度の経済産業省委託業務として実施された本調査研究は、サプライチェーンにおける製品含有化学物質の情報伝達システムであるchemSHERPAの国際標準化と普及拡大を目的として行われた。主要な調査項目として、循環型社会実現に向けた欧州グリーン・ディールやサーキュラー・エコノミー等の法規制動向、紛争鉱物対応における責任ある鉱物調達の国際的な取り組み、chemSHERPAのIEC/ISO ダブルロゴスタンダード化の検討、および製品含有化学物質情報伝達標準化戦略検討会の設置運営が実施された。

欧州における循環型社会の政策動向では、2019年12月に発表された欧州グリーン・ディールが2050年の気候中立達成を目標とし、持続可能な産業政策と新循環経済行動計画が策定された。これらの政策は製品の設計段階から耐久性、修理可能性、リサイクル可能性を重視し、消費者の「修理する権利」の確立や製品含有化学物質の情報開示強化を求めている。特にエコデザイン指令の拡張により、製品含有化学物質の規制が環境配慮設計の重要な要素として位置づけられている。

紛争鉱物分野においては、米国ドッド・フランク法やEU紛争鉱物規則等のハードローに加え、OECDガイドラインやIPC-1755規格等のソフトローによる責任ある鉱物調達の国際的な枠組みが構築されている。chemSHERPAは従来の化学物質情報に加えて、紛争鉱物情報の伝達機能を追加することで、より包括的なサプライチェーン情報管理システムとして発展する可能性が示された。

chemSHERPAの国際標準化については、現行のIEC62474を電気電子機器以外の製品分野にも適用可能なISO-IECダブルロゴ規格IEC82474-1への拡張が検討されている。自動車、船舶、航空機、鉄道等の各産業分野における製品含有化学物質情報伝達の現状調査により、chemSHERPAとの親和性と連携可能性が評価された。特に自動車業界ではIMDS等の既存システムとの相互運用性確保が重要な課題として認識されている。

戦略検討会では、JAMP運営委員会メンバーやIEC62474エキスパート等の専門家により、chemSHERPAの国際普及戦略が議論された。アジア諸国との連携強化、特に中国やタイ等の製造業関連国との情報交換と互換性確保、デュアルロゴ規格への迅速な対応が今後の重要な取り組みとして位置づけられている。