令和2年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(日本の貿易円滑化強化策(FTA活用含む)にかかる国際経済調査事業)調査報告書【公表用概要版・日本語】
報告書概要
この報告は、日本の貿易円滑化強化策および自由貿易協定活用にかかる国際経済調査について書かれた報告書である。
世界において自由貿易協定や経済連携協定による広域経済圏の構築が進展する中、近年では貿易円滑化を目的として、主に民間企業によるブロックチェーン技術等のデジタル技術を応用した貿易手続きの電子化サービスを提供する貿易プラットフォームが登場している。一方で、世界各国政府においても貿易円滑化を目的とした貿易関連手続きの電子化政策に基づくシングルウィンドウの構築が進められており、広域FTAや域内経済の統合を国策として推進する中国やASEAN諸国では、ナショナルシングルウィンドウの相互接続を進める動きもみられる。
本調査では、各国の貿易プラットフォーム、各国政府が取組みを進めるシングルウィンドウの現状、貿易手続き関連書類の電子化状況を把握し、これらの潮流に対応する日本の政策立案に資する調査分析を実施した。調査の結果、世界における貿易プラットフォームの潮流として、複数大陸を跨いだサービスを展開する主に欧米系による民間主導の貿易プラットフォームは他の貿易プラットフォームとの連携を進めているが、シングルウィンドウとの連携には至っていないことが判明した。これに対し、日本、韓国、シンガポール等のアジア系の貿易プラットフォームは、国の公共システムとの連携がなされているものや、プラットフォーム自体が国主導で運営されている場合がある点が特徴であった。
また、シングルウィンドウの構築状況について日本とASEAN、中国、韓国を横並びで概観した場合、日本は貿易プラットフォームを中核としたASEANとの連携を民間主導で目指す一方、中国は一帯一路戦略の一環で原産地証明手続きの電子化を主眼としたASEAN Single Windowとの連携を進め、韓国は自国内のインフラ拡充に向けた実証実験等に注力している状況であった。調査結果を踏まえると、日本としては、民間主導による貿易プラットフォーム及び公共システムのスピーディーな機能拡張や海外プラットフォーム等との連携、ASEAN等の地域との連携範囲拡大を実現していくことが重要であり、そのためには世界における貿易円滑化の潮流において電子船荷証券に法的根拠を付与する等の制度整備支援と、貿易の完全電子化を実現するグローバルサービス提供の両方を兼ね備えたポジションを官民連携で築くことが求められると結論づけている。
