令和2年度化学物質安全対策(化学物質管理分野におけるアジア協力に関する調査)調査報告書
報告書概要
この報告は、アジア地域における化学物質管理制度の調和と協力に関する令和2年度の調査研究について書かれた報告書である。
近年アジア各国で個別に進められている登録審査規制、表示規制、最終製品含有物質規制等の化学物質管理制度の導入が、アジア域内でサプライチェーンを構築する日系企業にとって貿易の支障となる懸念があることから、リスクベースかつ日本と親和性が高い制度構築に向けた協力が急務となっている。本調査では、特にASEAN地域における日系企業の円滑なサプライチェーン構築支援を目的として、二国間及び多国間協力のための調査が実施された。
二国間協力関連調査では、タイ及びベトナムの商工会議所を通じて現地日系企業19社にヒアリング調査を行い、現状の化学物質管理制度における課題を抽出した。プレ調査では、タイ48社、ベトナム26社から回答を得て、化学品の取扱い状況や制度上の課題を明らかにした。タイでは担当局の対応の遅さや窓口による意見の不一致が、ベトナムではGHS分類・ラベル表示の課題が特に指摘された。また、ベトナムにおけるMAD制度及びGLPに関する調査では、データの相互受理制度導入と優良試験所基準に基づく試験施設構築に向けた検討状況を調査し、政府関係者及び現地試験施設8か所への調査を支援した。さらに、タイ工業省工場局及びベトナム商工省化学品庁との二国間会合を開催し、有害物質法の施行状況、化学物質インベントリの検討状況、新規化学物質評価に関する政令案の策定進捗等について協議を行った。
多国間協力関連調査では、日ASEAN経済産業協力委員会の枠組み下で運用されている日ASEAN化学物質情報基盤の改善・普及に向けた会合対応を実施し、第6回技術ワーキンググループ会合及び第25回化学産業ワーキンググループ会合において、各国の法規制情報のタイムリーな提供体制構築や今後の活動方針について合意形成を図った。