令和2年度地域中小企業人材確保支援等事業(中核人材確保支援能力向上事業)実施報告書
報告書概要
この報告は、福島県における中小企業の中核人材確保支援に関する事業について書かれた報告書である。
令和2年度に特定非営利活動法人エティックが実施した「地域中小企業人材確保支援等事業」は、生産年齢人口の減少と新型コロナウイルス感染症の影響により厳しい経営環境に置かれた中小企業の成長・拡大を支援するため、中核人材確保のための支援体制構築を目的として行われた。事業は東邦銀行と連携し、福島県内の経営支援機関による地域ネットワークを形成することから開始され、金融機関15機関、その他の経営支援機関11機関の計26機関が参画した。
主要な取り組みとして、「地域ネットワークの形成やノウハウ共有等による持続的な仕組みの検討」と「中核人材確保支援の担い手の育成」の2つの柱で事業が展開された。前者では、参画機関を対象とした研究会を3回実施し、中核人材確保の5つのステップについて共通理解を醸成するとともに、エリア別・テーマ別研究会を通じて地域特性に応じた連携体制の検討が行われた。後者では、経営支援機関の職員を対象とした研修プログラムを提供し、実際の取引先企業に対するOJTを通じて人材確保支援のノウハウを体系的に習得させることを目指した。
事業実施の結果、ネットワーク形成においては参画機関間の相互理解が深まり、連携に向けた具体的な議論が進展した。特にエリア別研究会では、いわき、相双、県北、県中・南、会津の5エリアに分けて地域特性に応じた取り組みが実施され、地域人材コーディネーター養成講座などの具体的なプログラムが展開された。担い手育成については、研修参加者のSTEP支援スキルが向上し、特に経営課題の優先順位づけや戦術・業務の見直しといった上流工程での自己評価が大幅に改善された。
しかし、事業実施過程では複数の課題も明らかとなった。金融機関においては実際の取引先を対象としたOJT実施にハードルがあり、人材確保支援への取り組み方針が組織内で確立されていない場合には参加者の主体性を引き出すことが困難であった。また、地域ネットワークの持続性確保や自走化に向けた仕組みづくりが重要な課題として浮上した。
今後の展望として、県庁および自治体を中心とした民間とのネットワーク構築、プロフェッショナル人材戦略拠点への接続、経営支援機関と人材会社との連携という3つのモデルが提示され、それぞれの特徴と課題が整理された。特に中間支援組織やコーディネーターの育成、地域企業からの課金システムの構築、支援の精度向上などが重要な取り組み方向性として示された。