令和2年度エネルギー需給構造高度化対策に関する調査等事業(エネルギー多消費産業におけるエネルギー消費実態に関する調査)報告書
報告書概要
この報告は、エネルギー多消費産業におけるエネルギー消費実態に関する調査について書かれた報告書である。経済産業省資源エネルギー庁の委託により、日本エネルギー経済研究所が令和2年度に実施した事業の成果をまとめている。
平成27年に策定された長期エネルギー需給見通しでは、令和12年度までに原油換算5,030万kl程度の省エネルギーを達成することが示され、平成30年のエネルギー基本計画では産業部門のベンチマーク制度の拡大や見直しが重要施策として位置づけられた。平成21年に導入されたベンチマーク制度は、従来のエネルギー消費原単位年平均1%以上低減に加え、業界上位1~2割程度の事業者のエネルギー効率をベンチマーク指標として設定し、事業者に業界における客観的位置づけに基づいた省エネ取組を促進する制度である。
制度開始から10年が経過し、電炉による普通鋼製造業、電炉による特殊鋼製造業、洋紙製造業、板紙製造業において、代替燃料や品種構成、生産プロセスの違いなど省エネ取組以外の要素が原因でベンチマーク指標の事業者間ばらつきが大きいという課題が明らかになった。このため本調査では、これらの業種を対象として業界団体へのヒアリング、文献調査、約100社への調査票配布による製品・製造工程の違いによるベンチマーク指標値への影響を定量的に分析し、適切な反映方法を検討した。
調査の結果、各業種について品種構成や製造条件の違いを補正する新たなベンチマーク指標を提案した。電炉による普通鋼製造業では鋼種別エネルギー消費原単位の差異を、特殊鋼製造業では炉容量と製造工程の違いを、洋紙・板紙製造業では品種別エネルギー消費原単位の差異を考慮した補正式を開発した。また、EU-ETSのベンチマーク制度との国際比較により、日本のベンチマーク目標水準が国際的に遜色ない水準であることを確認した。これらの検討結果は工場等判断基準ワーキンググループにおける審議の基礎資料として活用され、ベンチマーク制度のさらなる適正化に寄与するものである。
