令和2年度産業保安等技術基準策定研究開発等事業(送配電設備の事故再発防止・技術基準に係る調査) 報告書
報告書概要
この報告は、令和元年台風15号による送配電設備の被害を踏まえた事故再発防止対策と技術基準改正に関する調査について書かれた報告書である。
本調査では、台風15号による鉄塔倒壊や電柱折損事故の原因究明を受け、今後の送配電設備の事故再発防止に向けた新技術の導入事例とセンサー設置等による動態監視の調査を実施した。鉄塔の改修工法として、主柱材の部分取り替えや補強、腹材の補強、支線による補強などの従来工法に加え、ヘリコプターによる鉄塔撤去工法やバルーンによる送電線撤去工法といった新たな撤去技術についても検討された。
さらに、送配電設備の技術基準改正に向けた関連情報の調査では、国内外の風圧荷重に係る技術基準の比較分析を行った。特に地域風速の検討において、電気規格調査会が作成した基本風速マップをもとに、地形による増速効果を考慮した地域ごとの設計風速の算定手法を開発し、設計風速マップの作成を進めた。海外の地域風速事例として英国やインドの取り組みについても調査を実施した。
また、電力安全小委員会のワーキンググループへの対応として、支線設置基準と木柱の安全率に関する国際比較調査を行った。米国、オーストラリア、台湾における電柱の支線設置基準では、電柱単体で許容できる荷重を超過する場合に支線による強度確保が指示されているが、隣接電柱の倒壊は想定されていないことが明らかとなった。木柱の安全率については、諸外国では最大瞬間風速から風圧を算定し安全率約1.0で設計する限界状態設計法が一般的である一方、日本では電圧区分に応じて1.2から1.5の安全率を適用する許容応力度法を採用していることが確認された。