令和2年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(企業のサプライチェーンに関する他国制度等の分析)調査報告書
報告書概要
この報告は、ドイツのサプライチェーン法案について書かれた報告書である。ドイツ政府は国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき2016年に策定した国別行動計画において、500名以上の従業員を有する企業の50%が2020年までに人権デューディリジェンスの要求事項を導入することを目標としていたが、2020年7月の標本調査では13-17%の企業しか要求事項を満たしていなかったため、法的拘束力のある規制として本法案が策定された。本法律は従業員3,000名以上(2024年1月から1,000名以上)のドイツ企業に適用され、サプライチェーンにおける人権上および環境関連の注意義務を課している。具体的には、リスク管理体制の整備、定期的なリスク分析の実施、方針書の採択、予防措置の定着、救済措置の実施、苦情処理手続の整備、書類作成および報告の義務などが含まれる。本法律の「人権」は附属書に記載された条約から生じる人権を意味し、市民的・政治的権利に関する国際規約、経済的・社会的・文化的権利に関する国際規約、ILOの中核的労働基準8条約、水俣条約、POPs条約が列挙されている。サプライチェーンには自社の事業範囲、直接的サプライヤー、間接的サプライヤーの行為が含まれる。企業は人権上のリスクを特定し、優先順位をつけてリスク分析を年一回実施し、必要に応じて予防措置や救済措置を講じなければならない。直接的サプライヤーに対しては契約での確約、管理メカニズムの合意、研修教育の実施、リスクベースの管理措置が求められる。違反した場合は最大80万ユーロ、年間売上高4億ユーロ超の企業は売上高の2%以下の過料が科せられ、公共調達からの排除も行われる。この法律により、ドイツ企業の取引先となる日本企業も人権・環境関連の取組みへの協力が必要となる可能性が指摘されている。
