令和2年度新エネルギー等の保安規制高度化事業(産業保安及び製品安全における市場メカニズムの促進に関する調査)報告書
報告書概要
この報告は、産業保安及び製品安全における市場メカニズムの促進に関する調査について書かれた報告書である。
近年、プラント事故や製品事故の継続的発生に対し、経済産業省は企業の自主的な保安力向上を促進する「スマート保安」政策を推進している。本調査では、2018年度に策定された「産業保安及び製品安全における統合的開示ガイダンス」の活用実態を把握し、さらなる普及促進策を検討した。ESG投資市場は急速に拡大しており、2014年に1兆円未満であった日本の ESG投資は2018年には231兆円に達し、世界的にも突出した成長率を示している。
調査では産業保安・製品安全分野の全上場企業約450社の統合報告書を分析し、安全情報の発信実態を確認した。また、新型コロナウイルス感染拡大により従業員の健康と安全への関心が高まっていることが判明した。市場メカニズムの活用事例として、低利融資、サステナビリティ・リンク・ローン、保険料優遇、格付による融資優遇、サプライチェーンにおける取引先評価などが確認された。
諸外国の調査では、ESG情報開示ガイダンス、評価機関による評価、エンゲージメント、保険料減額、認証・監査制度、サプライチェーン評価などの多様な評価手法が存在することが明らかになった。研究会での検討を通じて、ガイダンスの更なる活用に向けた課題として、ガイダンスのアップデートと広報活動の強化、安全と投資パフォーマンスに関する研究推進、安全KPIの標準化、社会インパクト評価手法の開発、市場メカニズム活用事例の作成などが提案された。