令和2年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(中南米地域における新たなエネルギーシステムの導入・社会実装に向けた経済関係の強化に関する調査)調査報告者

掲載日: 2021年5月19日
委託元: 経済産業省
担当課室: 通商政策局中南米室
委託事業者: 日本工営株式会社
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報告書概要

この報告は、中南米地域における新たなエネルギーシステムの導入・社会実装に向けた経済関係の強化に関する報告書である。

本調査は、チリ、ブラジル、アルゼンチンを対象国として、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」構想の精神を踏襲し、水素等の新エネルギーシステムの導入に係る事業機会を調査・分析したものである。中南米地域は過去20年間で24.2%の高い経済成長を遂げ、アジアを上回る成長率を示している。また、労働力生産人口の増加や資源・食糧の安定確保の観点から、日本企業にとって潜在的な参入余地が大きい有望な市場である。

各国のエネルギー分野における状況については、ブラジルが国の面積や経済・人口規模に応じて最も多くの事業候補を有している。従来よりバイオマス由来の再生可能エネルギー率が高かったが、風力・太陽光分野も急速に伸びており多くの事業が計画実施されている。チリは石炭火力発電所の全廃と再生可能エネルギー、水素エネルギーの導入を進めており、豊富な太陽光、風力、水力資源を活かしている。アルゼンチンは再生可能エネルギー率の低さや送配電インフラの不備が課題である一方、南部の風力資源は世界有数の質量を誇っている。

水素分野においては、三カ国すべてが高い関心を示しているが、特にチリが2020年に国家水素戦略を発表し、世界のパイオニアとして積極的に進めていることから最重要パートナーとなりうる。チリは豊富な再生可能エネルギー資源を背景に、最も競争力のあるグリーン水素を生産できる国の一つとして国際機関から評価されている。アルゼンチンもチリと同等の風力資源を南部パタゴニア地方に有し、ブラジルも急速に増加する風力・太陽光発電容量により将来的な電力価格低下が見込まれている。

日本への水素サプライチェーンの観点では、液化水素、アンモニア、液体有機水素キャリアが重要な選択肢として挙げられている。港湾や船舶への投資を考慮すると、現時点ではアンモニアと液体有機水素キャリアが有望と考えられる。チリの水素戦略によれば、水素の生産コストと日本までの輸送コストの合計で、チリはオーストラリアを下回るとの試算を示している。