令和2年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(アジア大でのサプライチェーン強靱化に向けた調査)事業報告書
報告書概要
この報告は、日豪印貿易大臣会合を受けたサプライチェーン強靱化に関する基礎調査について書かれた報告書である。
現在、企業のサプライチェーン環境は大きな変化に直面している。APAC域内での新たな経済圏の立ち上がり、消費行動の多様化、環境や人権といった新たな社会的価値への対応、そして自然災害や新型コロナウイルスのようなサプライチェーン断絶リスクの拡大により、サプライチェーン管理の複雑性が一層高まっている。中国の経済成長と一帯一路政策の推進に対し、欧米各国は対立的・保護主義的政策を展開する一方、APAC諸国は新たな事業機会を模索している。
日本企業のサプライチェーンは「地産地消モデル」から「グローバル分業モデル」まで存在するが、サプライチェーンの可視性の低さ、重要な判断を実施する体制・プロセスの欠如、急激な変化への対応力不足、外部プレイヤーとの連携不足、調達・生産拠点の代替選択肢の少なさといった課題が指摘されている。
サプライチェーン強靱化には、デジタル技術を活用したE2Eでの可視化、AI・ビッグデータによる計画の高度化、実行力の強化、ステークホルダーとの連携、戦略的冗長性の確保という5つの観点からの強化が必要である。豪・印・ASEAN各国の企業は、日系企業のサプライチェーン多重化・分散化をビジネス機会として期待する一方、より高付加価値な工程・商材へのシフトを志向している。
報告書では、個社レベルでのデジタル化推進と外部プレイヤーとの連携強化、各国政府による行政手続の簡素化やインフラ整備、地域大でのFTA/EPA等のフレームワーク整備と規制の標準化・ハーモナイゼーション、データ・情報インフラの構築が重要なアクションアイテムとして提示されている。