令和2年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(グローバル・サプライチェーンの環境対応等に関する分析)調査報告書
報告書概要
この報告は、グローバル・サプライチェーンの環境対応等に関する分析について書かれた報告書である。労働及び環境についてグローバル企業が今後抱えうるリスクと対応策を調査し、ファイナンス・金融業界における動向を分析している。労働や環境への関心が高まる中、ステークホルダーが行政・消費者・金融機関に加えて評価機関や人権・環境団体へと多角化し、企業に直接的・間接的な影響を与えている。EUが環境や労働への取り組みを先導し、公平な競争を名目に他地域にも同様のルールでの競争を強いており、環境面の国境炭素税や労働面の人権デューデリジェンスなど域外企業にも適用予定である。
環境面では、世界の地球温暖化が進展し平均気温が1.1℃上昇している状況下、2050年までに日本を含む124カ国と1地域がカーボンニュートラルを目指している。各国が炭素税や排出権取引を導入し、EU及び米国は炭素国境調整措置を検討している。日本は化石燃料比率が高く、土地制約や気候制約等によりエネルギー源の脱炭素化の難易度が高い。企業は脱炭素化に関する法規や顧客企業からの要求によってグローバルサプライチェーンから排除されるリスクがある一方、2025年までに合計4~5兆ドルの脱炭素関連新規ビジネスの機会も存在している。労働面では、国際労働機関等による指針に加え、イギリスの現代奴隷法やドイツのサプライチェーン法案など法的強制力を伴う規制が強化されている。サステナブルファイナンスは2020年に7300億米ドルの債券発行を記録し、グリーンボンドが最大シェアを占めている。
