令和2年度「バイオベンチャーにおける研究人材確保に関する調査」実施報告書
報告書概要
この報告は、バイオベンチャーにおける研究人材確保に関する課題と支援策について書かれた報告書である。
近年、世界の医薬品市場において創薬ベンチャーが新薬の6割超を生み出すなど、バイオベンチャーの重要性が高まっている。関西地域には京都大学、大阪大学、神戸大学などの国立大学やiPS細胞研究財団、理化学研究所といった世界をリードする研究機関が多く立地し、これらの研究シーズを活用した数多くのバイオベンチャーが輩出されている。しかし、これらの企業の多くは資金・人材・開発パートナーの確保に苦心し、特に研究人材の確保が困難な状況となっている。
バイオベンチャーが直面する人材確保の課題として、人材が大手企業に集中し滞留する流動性の低さ、バイオ系専門人材を確保するツールや情報の欠如、ベンチャーに就職してから大学に戻るキャリア形成が社会的に認められにくい現状などが挙げられる。また、アカデミア研究者の専門性とベンチャーが求めるスキルのミスマッチ、研究に対する捉え方や評価判断基準の違いといった文化的な相違、ベンチャーの知名度の低さによる就業機会の損失なども問題となっている。
本調査では、バイオベンチャー、大学、民間就職支援会社を対象として、アンケート調査、ヒアリング調査、事例調査を実施し、現状と課題を把握した。その結果、インターンシップを活用した博士人材の採用、大学研究者の副業・兼業、外国人高度人材の受け入れ、働きやすい職場づくり、キャリアフォーラムでの魅力発信など、様々な取り組み事例が確認された。
有識者による検討会での議論を踏まえ、アカデミアからバイオベンチャーへの研究人材流動化に向けた支援方策を提言している。具体的には、人材へのアプローチを行うための枠組みの構築、効果的なアプローチ手法と具体的なアクションの実施、短期から中長期にかけた優先的な取り組みの整理などが含まれており、我が国のバイオ産業の競争力強化に向けた包括的な支援策が示されている。
