令和2年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(英国のEU離脱等による現地進出日系企業への影響調査)最終報告書
報告書概要
この報告は、英国のEU離脱と新型コロナウイルス感染症の流行による現地進出日系企業への影響について書かれた報告書である。英国は2016年の国民投票を受けて2020年1月末にEUから離脱し、同年12月24日に英EU通商・協力協定が合意された。この協定は自由貿易協定、市民の安全確保のための新たなパートナーシップ、ガバナンスに関する水平的協定の三本柱で構成されており、全品目で関税ゼロ・割当なしが認められている。調査では2021年1月から3月にかけて、自動車部品、機械類、製薬の英国・欧州進出日系企業16社にヒアリングを実施した。物流の混乱による影響については、一部で部品調達の遅延や物流コスト増加が見られたものの、多くの企業で大きな影響は確認されなかった。関税賦課や通関手続きについては、原産地証明書の準備や通関業務の複雑化により事務工数が増加した。知的財産権や基準・認証の変更については、UKCAマークへの対応や商標出願の煩雑化が課題となっている。越境データ移転については、UK GDPRがEU GDPRを踏襲しているため大きな問題は生じていない。新型コロナウイルス感染症の影響では、2020年前期に事業環境が大幅に悪化し、特に製造業では工場操業停止や従業員の雇用維持が深刻な課題となった。多くの企業が英国政府のJob Retention制度を活用して従業員の賃金支払を補償した。英国・欧州経済への影響では、新型コロナウイルスによる経済収縮が深刻であったが、ワクチン接種の進展により回復基調にある。