令和2年度重要技術管理体制強化事業(諸外国における国際約束の履行等に基づく貿易管理制度等に係る調査)
報告書概要
この報告は、北朝鮮に対する国際的な制裁措置の履行と貿易管理体制の強化について書かれた報告書である。2006年以降、北朝鮮による核実験と弾道ミサイル発射により国際連合安全保障理事会決議に基づく制裁措置が厳格化されている。北朝鮮の制裁回避手口は巧妙化しており、特に石油精製品の違法取引は年間上限量の4倍から8倍に達する実態が明らかになっている。日本政府は国連決議よりも厳しい独自制裁を実施し、2006年から輸入を、2009年から輸出をほぼ全面的に禁止している。第1部では諸外国の制度調査を実施し、米国の包括的禁輸措置について分析している。米国財務省外国資産管理局が北朝鮮制裁を実施し、米国企業や米国人に適用される制裁体制を維持している。欧州連合は2006年以降、国連制裁をEU法に転置し、独自制裁として57人の個人と9つの団体をリストアップしている。制裁措置は武器、汎用品、石油、繊維など幅広い品目の輸出入制限や投資禁止を含んでいる。韓国の文在寅政権下では、2017年に4つの対北制裁決議が採択される中、軍事的緊張の高まりに対応した制裁履行状況が分析されている。第2部では日本企業の実態調査を実施し、日朝間の経済取引量が公式統計上ゼロに近いレベルまで縮小した状況を検証している。本調査は我が国の貿易管理体制をより実効的に運用することを目的とし、各国の制裁執行状況の比較分析を通じて制裁措置の実効性向上に寄与することを目指している。
