令和2年度燃料安定供給対策に関する調査等事業(潤滑油の安定供給に向けた原料確保の多様化に関する調査・分析事業)調査報告書
報告書概要
この報告は、潤滑油の安定供給に向けた基油原料の多様化と使用済み潤滑油の基油再生に関する調査・分析について書かれた報告書である。
我が国の潤滑油製造に使用される基油は主に原油から製造されるが、中東情勢の緊迫化や新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、基油の多様化が必要となっている。基油の多様化手段として期待される使用済み潤滑油のリサイクルによる基油再生について、国内外の動向調査、再生基油を用いた潤滑油の試作・品質評価、社会システムの検討を実施した。
国内潤滑油製造事業者への調査では、基油の調達先は大部分が国内のみであり、代替策を確保済みの事業所は約2割にとどまることが判明した。一方、品質と経済性に問題がなければ再生基油を使用してもよいという意見が多く得られた。現在我が国では基油再生はほとんど行われておらず、年間168万kLの使用済み潤滑油のうち約61万kLが燃料として利用され、年間約165万トンのCO2が発生している。
海外調査では、米国において年間約360万kLの使用済み潤滑油が回収され、94万kLが再精製されて再生基油となっていることが確認された。北米では政策的インセンティブにより回収率向上が図られており、12企業13工場で基油再生が事業として成立している。
再生基油の品質評価では、海外から入手した15油種の再生基油を用いてエンジン油を試作し、性状分析を実施した。その結果、適切に添加剤を配合した試作エンジン油はAPIやJASO規格の品質を満足する可能性が確認された。特に粘度指数は原料となる潤滑油製品の高品質化を反映して100を超える油種が多く、酸化安定性もGroup I以上の性能を示した。
社会システム検討では、基油再生を推進するための課題として、使用済み潤滑油の効率的な分別・回収システムの構築、再生基油の品質基準策定、潤滑油製造事業者や需要家での再生基油利用促進、法規制による支援などが挙げられた。今後カーボンニュートラル社会においてガソリンや軽油の減産に伴う鉱油系基油供給のひっ迫が想定されるため、環境に優しい経済的な基油再生の実現が必須である。
