令和2年度化学物質規制対策事業(特定物質危機管理体制構築事業)報告書
報告書概要
この報告は、化学兵器禁止法に規定する特定物質の廃棄方法について書かれた報告書である。令和2年度に一般財団法人化学物質評価研究機構が実施した特定物質危機管理体制構築事業の成果をまとめている。国民保護法に基づき、武力攻撃事態等における毒性物質取扱所の安全確保が求められる中、テロリストによる盗難や武力攻撃による流出を防止するため、特定物質取扱事業所における不要不急な特定物質の廃棄推進が必要となっている。本調査では化学兵器禁止法別表の毒性物質29物質から、国内保有量、許可使用者数、使用実績等を勘案してルイサイトおよび窒素マスタードの6物質を選択した。ルイサイトは有機ヒ素化合物のびらん系化学剤であり、皮膚接触により炎症を起こす。窒素マスタードも同様にびらん剤として分類されるが、化学兵器として実際に使用された記録はない。文献調査により各物質の廃棄方法を検討した結果、ルイサイトについては酸化処理、加水分解、燃焼処理が有効であることが確認された。特に次亜塩素酸ナトリウム溶液による酸化処理は試験室レベルでの分解に適している。窒素マスタードについては塩基性水溶液による加水分解や燃焼処理が効果的であることが判明した。また安全保障貿易情報センターのウェブセミナーに参加し、最新の生物・化学兵器拡散動向やノビチョクなどの新規物質に関する情報を収集した。今後も平時および緊急事態時における特定物質の適確な処理のため、継続的な情報収集が重要である。
