令和2年度産業経済研究委託事業(経済産業政策・第四次産業革命関係調査事業費(我が国基盤産業の競争環境及び諸外国の企業結合等に係る競争政策の動向に関する調査))調査報告書
報告書概要
この報告は、令和2年度の産業経済研究委託事業として実施された、我が国基盤産業の競争環境と諸外国の企業結合に係る競争政策の動向に関する調査報告書である。第四次産業革命の進展により世界各国の経済・社会環境が大きく変化している中、従来の競争評価手法では対応困難な状況が生じており、より複雑な状況を反映した評価手法の適用が求められている。さらに国際情勢の変化や新型コロナウイルス感染症の拡大を契機として、我が国の基盤産業におけるサプライチェーン強化の要求が高まっており、市場の競争促進のみならず、産業を維持できる競争環境の整備と中長期的な産業競争力の確保が喫緊の課題となっている。
本調査では我が国の適切な競争環境整備に向けた政策の在り方を考察するため、3つの主要な調査が実施された。第1章では我が国基盤産業を想定した競争環境の評価として、日立、東芝、東京電力、中部電力による原子力事業の共同事業化を題材とし、本共同事業化の概要と参画企業の概況を整理した後、関連する市場構造や規模及び最近の動向を分析している。第2章では諸外国における競争法上の問題解消措置について、米国、EU、フランスを対象として構造的措置と行動的措置の類型ごとに近年の適用基準、件数、措置内容の傾向を調査している。各国とも一般的に構造的措置が好ましいとされ、特に水平型企業結合でその姿勢が強い一方、垂直型企業結合では行動的措置も積極的に検討される傾向が示されている。
第3章では諸外国における競争法上の例外的な措置について、米国、EU、英国、ドイツを対象として競争法の適用除外を中心とした例外的措置の内容や考え方、具体的事例を調査している。各国・地域の環境に応じて規定されている多種多様な例外的措置を4つの類型に分類整理し、日本の適用除外制度との比較を行った結果、海外各国・地域で規定されながら日本では規定されていない制度が明らかとなった。また新型コロナウイルス感染症の世界的大流行に対して各国・地域の競争当局が講じた競争法上の様々な例外的措置についても整理し、経済と公衆衛生上の緊急事態における競争当局の柔軟かつ重要な役割と手段を示している。