令和2年度エネルギー需給構造高度化対策に関する調査等事業(熱量バンド制への移行に向けた検討に関する調査)調査報告書

掲載日: 2021年6月11日
委託元: 経済産業省
担当課室: 資源エネルギー庁電力・ガス事業部ガス市場整備室
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令和2年度エネルギー需給構造高度化対策に関する調査等事業(熱量バンド制への移行に向けた検討に関する調査)調査報告書のサムネイル

報告書概要

この報告は、日本の都市ガス供給制度における熱量バンド制への移行に関する検討について書かれた報告書である。現在の標準熱量制では、都市ガスの熱量を一定の標準値に維持するため、LNGにLPGを添加する熱量調整設備が必要となり、これがガス小売事業への参入障壁となっているとされている。欧州や韓国では一定範囲内の熱量であれば供給可能な熱量バンド制が導入されており、競争促進の観点から日本でも検討が進められている。

報告書では、まず韓国とイギリスにおける熱量バンド制の実態調査を実施している。韓国では熱量計・流量計の設置に1台当たり約0.8~1.5億ウォン、維持管理に年間約6億ウォンが必要であり、全国107箇所の卸供給地点に119台が設置されている。都市ガス事業法により測定方法や較正周期が規定され、年1回の定期校正が義務付けられている。イギリスでも同様の調査が行われ、料金システムや規制体系の詳細が調査された。

次に、熱量バンド制への移行や標準熱量引き下げが燃焼機器に与える影響について詳細な調査が実施された。ガスエンジン、工業炉、吸収冷温水機、ガスヒートポンプ、業務用・家庭用燃焼機器、エネファーム、天然ガス自動車など14種類の機器について、熱量変動による性能への影響や必要な対策が検討された。特に雰囲気ガス発生装置やガラス炉等の工業用機器では影響が強く懸念され、機器更新や改修が必要となる場合が多いことが判明した。

コスト試算では、熱量バンド制(43~45MJ/㎥または44~46MJ/㎥)と標準熱量引き下げ(40~44MJ/㎥)の各シナリオについて、機器対策コストとオンサイト熱量調整設備導入コストが算出された。10年後の移行では標準熱量引き下げでも約5,000億円の初期コストが必要であり、熱量バンド制では追加的に熱量計・流量計設置コスト971億円が発生することが明らかとなった。移行時期が遅くなるほど機器の自然更新により対策コストは減少するが、熱量バンド制では20年後移行でも約7,400億円、30年後移行でも約4,400億円の移行コストが必要と予測されている。