令和2年度地域経済産業活性化対策調査事業(大企業のリソースを活用した地域中小企業の成長・発展に関する実証調査)調査報告書
報告書概要
この報告は、大企業のリソースを活用した地域中小企業の成長・発展に関する実証調査について書かれた報告書である。
日本では大手企業のベンチャーキャピタルによるスタートアップ投資が東京都に集中しており、地域中小企業との連携が十分に行われていない現状がある。このような背景から、令和2年度地域経済産業活性化対策調査事業として、西日本旅客鉄道株式会社広島支社が中心となって大企業と地域中小企業の効果的な協業方法を実証する調査が実施された。
調査では、JR西日本が取り組む「てみてプロジェクト」の枠組みを活用し、オンラインマルシェ、オンライン商談会、対面商談会という三つの場を新たに設定した。これらの場を通じて大企業と地域中小企業が共同で販路開拓に取り組み、協業における課題や必要な機能を検証することが目的とされた。てみてプロジェクトは、広島・山口地域において特色ある地域産品の継続的な販路拡大を目指し、JR西日本や専門家が伴走型で商品開発・販路拡大支援を行う取り組みである。
実証調査の結果、効果的な協業のために三つの重要な機能が明らかになった。第一に、地域中小企業の目標達成が大企業の目標達成に繋がる関係性のビジョン化である。双方の目的が一致し、同じ目標に向かって協力できる関係性を明確に共有することが必要となる。第二に、大企業と地域中小企業双方の事業に通じた地域の担い手や外部専門家の関与が重要である。日本では人材の流動性が低く、両方の事業に精通した人材が少ないため、翻訳機能を担う専門家チームが円滑な事業運営に不可欠である。第三に、社外と社内事業とのコラボレーションを促進できる大企業内の専門組織・人材の存在が必要である。JR西日本の地域共生室のような窓口組織が、社外との連携を組織内にフィードバックし、継続的な事業展開を図る機能を担っている。
