令和2年度中小企業実態調査事業知的財産取引検討会報告書

掲載日: 2021年6月11日
委託元: 経済産業省
担当課室: 中小企業庁事業環境部取引課
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報告書概要

この報告は、中小企業における知的財産の取引適正化と活用促進について書かれた報告書である。公正取引委員会の2019年調査により、中小企業が大企業との取引においてノウハウや知的財産権を不当に取り扱われている実態が明らかになった。具体的には、秘密保持契約なしでの取引強要、営業秘密の無償開示強要、知的財産権の無償譲渡強要、著しく不平等な共同研究開発契約の締結強制などの問題事例が報告されている。

これらの問題の背景には、「知恵はタダ」という取引慣行、大企業側からの一方的な契約条項の提示、中小企業の知的財産に関する専門知識不足がある。そのため本検討会では、中小企業が具体的に提案できる契約書ひな形を作成した。秘密保持契約、共同開発契約、開発委託契約、製造委託契約の4種類のひな形を提示し、各契約類型の違いを明確にして知的財産の適切な保護を図った。

また、中小企業による知的財産活用の課題についても検討した。多くの中小企業は知的財産を特許と同義に捉え、自社には縁がないと考えているが、実際には現在操業している中小企業には顧客から評価される何らかの強みが存在する。特許権だけでなく意匠権や商標権の活用、ノウハウの社内保持、地域団体商標による地域ブランド確立なども有効な戦略である。

中小企業の知的財産活用を促進するため、よろず支援拠点や商工会議所などの中小企業支援機関と、特許庁や日本弁理士会などの知財支援機関との連携が重要である。中小企業支援機関が経営課題を知的財産の課題として整理し、知財支援機関につなぐ役割が期待される。本検討会は中小企業政策と知的財産政策が重複する課題に対して両方の視点から検討を行う初の取組であった。