令和2年度規制改革推進のための国際連携事業(オープンソースベースのデジタルIDプラットフォームの展開可能性に関する調査) 最終報告書

掲載日: 2021年6月25日
委託元: 経済産業省
担当課室: 商務情報政策局総務課国際室
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令和2年度規制改革推進のための国際連携事業(オープンソースベースのデジタルIDプラットフォームの展開可能性に関する調査) 最終報告書のサムネイル

報告書概要

この報告は、インドのデジタルIDシステム「India Stack」の海外展開版である「MOSIP」について書かれた報告書である。MOSIPは、インド政府が実現したファイナンシャル・ソーシャルインクルージョンの成功体験を、他の途上国へも横展開できるよう開発されたオープンソースベースのデジタルIDプラットフォームである。世界には約10億人がIDを持たない人々が存在し、その大半がアフリカ・南アジアで生活している。この状況を受けて、国連はSDGsで「2030年までに全ての人々に法的な身分証明を提供する」を目標として掲げ、世界銀行もID4Dイニシアチブを通じて途上国のデジタルID導入を積極的に支援している。

MOSIPは現時点で途上国向けオープンなデジタルIDプラットフォームとしては唯一の選択肢であり、国際機関や途上国から高い注目を集めている。しかし、実際にMOSIP導入に着手したフィリピン、モロッコ、ギニア、エチオピアの4か国の進捗は順調とは言えない状況である。特にフィリピンでは、入札要件の直前変更や単独応札への疑問視など、プロジェクト運営に多数の問題が発生している。これらの課題の根本的な原因は、導入国側がMOSIPを通じて何を実現したいのかというデジタルビジョンの策定や、必要なエコシステム設計が不十分であることにある。単にMOSIPを導入するだけでは、India Stackのような成功は再現できず、各国の個別事情に応じた包括的なシステム構築が必要である。したがって、MOSIP普及には導入国のプロジェクト設計・運営支援まで含めた伴走型の支援が重要であることが明らかになった。