令和2年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(東南アジア等・インド地域を対象にしたアジアDX具体化に向けた実態調査)報告書
報告書概要
この報告は、東南アジア等・インド地域を対象にしたアジアDX具体化に向けた実態調査について書かれた報告書である。経済産業省が令和2年度に実施した調査事業として、EY新日本有限責任監査法人が実施した内容がまとめられている。日本政府は成長戦略実行計画においてアジアDXプロジェクトの推進を位置づけており、コロナ危機によってデジタル化が加速する中で日本企業の変革のためにもADXの推進が不可欠となっている。調査の目的は、同僚・同士効果を起こすリーディングモデル創出と効果的な政府支援策の策定である。調査範囲はASEAN+インドを対象国とし、農業、ヘルスケア、フィンテック、ロジスティクスの4分野に焦点を当てて実施された。ASEAN+インドにおけるスタートアップへの投資は2016年以降急激に加熱しており、特にインドとシンガポールが多く、GrabやLazada、Flipkart、Gojekなどの統合的サービスを提供するスーパーアプリのソフトウェア開発企業やEコマース企業への投資が目立っている。各分野において具体的なDXの取り組みが確認されており、農業では農業用品販売プラットフォームや農家向け情報提供サービス、フィンテック分野ではデジタル信用スコアリングやローン提供サービス、ヘルスケアでは遠隔医療プラットフォームやAI診断支援サービス、ロジスティクスでは配車マッチングアプリやラストワンマイル配送サービスなどが実施されている。一方で各分野には深刻な社会課題が存在しており、農業における低い労働生産性や気候変動脆弱性、フィンテックにおける金融包摂の欠如、ヘルスケアにおける医療地域格差や人材不足、ロジスティクスにおける物流効率の欠如などが挙げられている。これらの社会課題に対応しうる日本のDX関連ソリューションも調査を通じて整理されており、ドローンやAIを活用した農業技術、IoT搭載車を活用したオートローンシステム、スマートホスピタル技術、自動走行ロボットとクラウド連携による倉庫業務省人化技術などが確認された。効果的な政府支援策として、リーディングモデルの創出に向けた一気通貫の伴走型支援と、ADX推進のための横断的・恒常的な枠組みの形成が重要であると結論づけられており、台湾との協業可能性についても言及されている。
