令和2年度エネルギー需給構造高度化対策に関する調査等事業(福島県における水素社会のモデル構築に関する調査)報告書
報告書概要
この報告は、福島県における2050年カーボンニュートラル達成に向けた水素社会実現への取り組みについて書かれた報告書である。
東日本大震災から10年が経過する中、福島県は震災からの復興・創生の柱として福島新エネ社会構想を推進し、再生可能エネルギー先駆けの地や未来の新エネ社会を先取りするモデル創出拠点を目指してきた。2020年10月の日本政府による2050年カーボンニュートラル宣言を受け、水素社会の実現に向けた活動をより一層加速する必要性が生じている。
本調査では水素の機能・役割を4つに再定義している。すなわち、余剰電気の貯蔵機能、不足電気の補完電源燃料機能、カーボンニュートラル燃料・熱源の原材料機能、および化石エネルギー由来燃料・熱源の代替機能である。福島県の2050年カーボンニュートラル達成に向けては、運輸部門での水素利活用が積極的に進むことが予想され、2050年の需要量は約9万トン超となる見込みである。
自動車部門においては、FCV、FCトラック、FCバスの普及が重要となる。2030年には FCV1.3万台、FCトラック1,200台、FCバス20台、2050年にはそれぞれ13.5万台、1.2万台、200台まで普及させる必要がある。水素ステーションについても、FCV向け小型STを2030年12基から2050年110基、FCトラック・FCバス向け大型STを2030年20基から2050年200基まで整備していく必要がある。
水素関連産業の育成・集積に向けては3つのステップが示されている。第1ステップでは水素アプリケーション・インフラの導入・運用に関する周辺産業・裾野産業の現地化、第2ステップでは県外企業との新規プロジェクトやPoCでの協業を通じた事業機会探索・参入、第3ステップでは化学系企業、SIer、先端研究が存在する福島の強みを活かした革新技術の開発を進めるとしている。世界的に水素への期待が高まる中、日本が水素産業で優位なポジションを築くためには、産官学を連携させる社会システムづくりとリーダーシップが重要である。
