令和2年度産業経済研究委託事業(我が国におけるFinTechのデータ利活用に関する調査検討)調査報告書
報告書概要
この報告は、日本におけるFinTechのデータ利活用に関する調査について書かれた報告書である。NTTデータ経営研究所が経済産業省の委託を受けて2021年3月に実施した調査であり、諸外国のデータ戦略・金融関連戦略、少額多頻度決済システム、API等を通した金融データ活用、クレジットカードデータ活用、国内事業者ヒアリングの5つの調査報告書から構成されている。
調査では、イギリスのBank of Englandが発行したFuture of Financeにおける金融システムの将来構想を重点的に分析している。同構想では、デジタル経済への貢献、重要な移行の支援、金融の強靭性の増強という3つの分野において9つの提言を示しており、特に決済システムの革新について詳細な方針が示されている。決済システムでは安全性・高耐久性・高イノベーティブ性を備え、個人・法人が低コストで利用できる信頼できるシステムの構築が必要とされている。
EUのデジタル金融戦略やリテール決済戦略、北欧のスマートガバメント構想についても調査対象となっており、データ連携基盤の先進事例としてEU Gaia-XやエストニアのX-Roadが取り上げられている。決済システムの動向では、イギリスのNPA、EUのEPI、北欧のP27等の事例が分析されている。
金融データ活用の規制動向については、EU、シンガポール、オーストラリアの事例が調査され、APIを通じたデータ活用の進展状況が整理されている。クレジットカードデータ活用では、Visa、Mastercard、フランスのCB、オーストラリアのeftpos、インドのRuPay等の国際的な動向が分析されている。
国内事業者ヒアリングでは、現在および将来の想定課題が整理され、レガシーシステム利用に起因する社会的コストについて試算が行われている。中小企業の入金消込事務コストだけでも月間約4943億円、そのうち効率化可能なコストが約2738億円と算出されており、決済システムの近代化による大きな経済効果が期待されることが示されている。
