令和2年度化学物質安全対策(規制化学物質に関する国際的な動向調査)報告書
報告書概要
この報告は、POPs条約及びPIC条約の規制対象物質及び規制候補物質に関する国際的な動向調査について書かれた報告書である。令和2年度に一般財団法人化学物質評価研究機構が実施した調査事業の結果をまとめており、化学物質管理に関する国際条約への対応に必要な基礎情報を収集・整理している。調査内容は主に二つの柱で構成されており、第一にPOPs条約及びPIC条約の規制候補物質に関する調査である。具体的には、ペルフルオロヘキサンスルホン酸とその塩及び関連物質、デクロランプラス、メトキシクロル、新規提案物質UV-328について詳細な調査を実施している。デクロランプラスについては有害性情報が不十分であることからリスク管理評価書の段階に進むことが合意されず、欧米での規制状況及び毒性評価の調査を特化して行った。メトキシクロルについてはリスク管理評価書の段階に進むことが決定されたが、国内では失効農薬であり農薬以外の用途も確認されていない状況が明らかとなった。また、スイスより新たに提案されたUV-328については、国内法令での措置状況や有害性評価・リスク評価の実施状況を調査し、POPs条約附属書Dに規定されるスクリーニング基準に基づく残留性及び生物蓄積性情報について検討を行った。第二に非意図的に含有する高懸念物質等に関する海外規制状況調査である。EU、米国、カナダ、中国及び韓国における化審法第一種特定化学物質に該当する化学物質について、非意図的な副生成物として含有される高懸念化学物質に係る基準値の有無や設定根拠を調査している。さらに、PFOA関連物質についてスイスから176物質の追加提案がなされたことを受け、これらの物質のPFOAへの分解性、生物蓄積性、有害性、長距離移動性を示す文献調査を実施した。国際会議への対応として、第16回残留性有機汚染物質検討委員会及び第16回化学物質検討委員会に参加し、検討状況の調査と情報収集を行った。本報告書は、これらの国際条約に新たな物質が追加された場合に国内の法制度等に適切に反映するために必要な情報を提供している。
