令和2年度産業経済研究委託事業(企業の成長投資・オープンイノベーション促進に向けた環境整備のための調査研究)大企業×スタートアップのM&Aに関する調査報告書(バリュエーションに対する考え方及びIRのあり方について)
報告書概要
この報告は、大企業とスタートアップのM&Aに関するバリュエーションの考え方およびIRのあり方について書かれた報告書である。イノベーションの担い手であるスタートアップは社会にとって重要な存在であるが、日本の大企業は一般的に自前主義の傾向が強く、多くの企業が成長戦略の中にM&Aによるオープンイノベーションの活用を組み込めていない状況にある。米国ではGAFAMに代表される大企業がスタートアップに対して積極的にM&Aを行い非連続的な成長を遂げている一方で、日本ではエグジット手段に占めるM&Aの割合が非常に低い状況である。本調査では、大企業とスタートアップの両者がM&A時のバリュエーションを適切に評価するための考え方と、M&Aの有用性を投資家に理解してもらうためのIRのあり方を取りまとめている。M&Aが活発に行われない主な要因として、バリュエーションが合意に至らない問題とのれんの減損発生への懸念が挙げられている。バリュエーションの目線相違については、スタートアップの非財務情報やシナジー効果に関する情報を両者で適切に把握し認識をすり合わせることが重要であるとしている。また、アーンアウト条項や株式対価M&Aの活用も解決手段として提示されている。IRのあり方については、投資戦略策定時、M&A実行時、M&A後モニタリングの各段階での積極的な情報開示が投資家の理解促進に必要であるとしている。大企業が成長戦略の中にスタートアップのM&Aを組み込むことで、オープンイノベーションによる中長期的な価値向上が実現でき、スタートアップにとっても安定的な成長に資する選択肢となり得るとしている。
