令和2年度二国間クレジット取得等のためのインフラ整備調査事業(市場メカニズム交渉等に係る国際動向調査)報告書英文(公表用)
報告書概要
この報告は、パリ協定における市場メカニズムに関する国際動向について書かれた報告書である。2020年度のFY2020 Infrastructure Development Research Project for Joint Credit Acquisitionの一環として、一般財団法人日本エネルギー経済研究所が作成したものである。
パリ協定は2016年11月に発効したが、同時期に行われた米国大統領選挙でパリ協定離脱を公約としたトランプ氏が当選し、2017年に実際に離脱を決定するという状況下で、パリ協定実施規則であるパリ・ルールブックの交渉が継続された。2018年12月のCOP24では一部の課題を除いてパリ・ルールブックが採択されたが、市場メカニズムを規定する第6条のルールブックは合意に至らなかった。
第6条には三つのアプローチが規定されており、協力的アプローチ(第6.2条)、第6.4条メカニズム、非市場アプローチ(第6.8条)がある。これらの実施に必要な文書の策定について、2016年から様々な場で議論が継続されているが、各国の見解の相違により合意形成に至っていない。COP25では二日間延長して交渉が行われたものの、収益分担の適用範囲や二重計上回避のための相当調整の適用、京都議定書のCDMから第6.4条メカニズムへの移行などの課題で合意できず、COP26での採択を目指すこととなった。
COVID-19パンデミックの影響により2020年に予定されていたCOP26は2021年に延期されたが、オンライン会議などを通じて合意形成の努力が続けられている。一方で、ICAO(国際民間航空機関)のCORSIA(国際航空のためのカーボンオフセット・削減スキーム)が2021年から実施される準備が進められ、企業による自発的なクレジット利用の動向も活発化している。報告書では、これらの市場メカニズム交渉の動向と関連する取り組みを調査し、各国の市場メカニズム動向と課題を分析している。
