令和2年度地球温暖化・資源循環対策等に資する調査委託費(リサイクル炭素繊維の利用・評価手法等に関する国際動向調査)

掲載日: 2021年8月20日
委託元: 経済産業省
担当課室: 産業技術環境局資源循環経済課
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報告書概要

この報告は、リサイクル炭素繊維(rCF)の利用・評価手法等に関する国際動向について書かれた報告書である。令和2年度地球温暖化・資源循環対策等に資する調査委託費事業として実施され、日本、米国、欧州における炭素繊維強化プラスチック(CFRP)のリサイクル技術および評価手法の開発状況を包括的に調査したものである。

世界的に軽量かつ高強度な特性を持つCFRPは航空機や自動車等への普及が進んでいるが、その工程端材や廃材の大部分は埋め立て処理されており、ライフサイクル全体の環境負荷低減のため循環利用システムの確立が求められている。特に欧州ではAirbus社等を中心にCFRPリサイクル技術およびサプライチェーン構築が進んでいるものの、廃CFRPを統一的に評価する手法が存在せず、効率的な循環利用システム確立には至っていない状況である。

rCF市場は欧州や米国を中心に形成されており、現在の主要用途は電子製品向けノートPCケース、風力発電関係の風車ナセルカバー、自動車部品のCピラー等となっている。米国ではDELLのノートPCケースでrCF製品が採用され、欧州では風力発電向けでの採用が進んでいる。自動車向けでは欧州や米国OEMで使用量が増加しており、BMWの7シリーズをはじめとしてルーフカバー等への採用が拡大している。研究開発機関では熱分解、加溶媒分解、超臨界流体による分解等の様々な分解方法が研究されているが、事業化しているメーカーの多くは熱分解法を採用している。

廃CFRPの処分に関しては、日本では工程内端材の一部がサーマルリカバリーされているものの、多くは産業廃棄物として埋め立て処理されている。欧州では廃棄物規制が厳格化されており、特にドイツでは2005年から埋め立て前処理義務化、英国では2018年からプラスチック税導入等の法規制が強化されている。各国でrCFへの開発支援策も実施されており、日本では新エネルギー・産業技術総合開発機構による研究開発支援、欧州ではHorizon2020等のプログラムによる支援が行われている。

評価試験法については、産業技術総合研究所において機械特性評価技術、炭素残渣量定量評価技術、不純物元素評価技術等の研究が進められている。rCFの商業化推進のためには評価試験方法のISO規格化が必要であり、世界の研究機関とのラウンドロビンテスト実施による有効性確認が求められる。今後はISO・TC61/SC13において新規ワーキンググループ設立を目指し、rCF評価方法の国際標準化を通じて日本企業の競争力強化を図ることが重要である。