令和2年度産業経済研究委託事業(組織内における「人脈の共有・見える化」に係る実証及び調査報告)
報告書概要
この報告は、経済産業省における名刺管理サービス「Sansan」を活用した人脈の共有・見える化に関する実証事業について書かれた報告書である。令和2年度には経済産業省本省職員4,000名を対象として実証事業を実施し、名刺のデジタル化による生産性向上と人脈の可視化による情報共有の活性化を目的とした検証が行われた。実証期間は2020年6月から2021年3月までの10か月間であり、ライセンス数4,000ID、スキャナ50台、月間4万枚の名刺取り込み枠を設定して実施された。
過去に取得した名刺の一括スキャン支援として、郵送と訪問による代行サービスを提供し、期間中に約35万枚の名刺をスキャンした結果、約700時間の業務時間削減効果を実現した。利用促進のための取り組みとして、ユーザ向け機能説明会の開催やSansan利用促進強化月間の実施により、職員の理解度向上と活用率の向上を図った。職員向けアンケート結果では、名刺の整理時間短縮、他部署職員の人脈活用、企業情報の効率的な収集などの効果が確認され、特に紙の名刺管理からの解放による保管場所の削減や情報管理コストの簡素化が評価された。
ユーザインタビューからは、局内・課内を横断した名刺情報の共有により意見交換の機会が増加し、人事異動ニュースや財務・業績情報の自動取得機能により情報収集の効率化が実現されたことが明らかとなった。考察では、蓄積される名刺の増加により政策連携に関するアウトプットが向上し、異動が頻繁な行政機関において前任者の人脈を後任が活用できる仕組みの有効性が確認された。また、短期間で効率的な人脈活用システムを構築するためには、スキャン代行やユーザビリティの向上といった手厚いサポートが必要不可欠であることが判明した。
