令和2年度エネルギー需給構造高度化対策に関する調査等事業(地域共生型再生可能エネルギー発電事業(仮称)の取組拡大に向けた調査)報告書
報告書概要
この報告は、地域共生型再生可能エネルギー発電事業の取組拡大に向けて策定された顕彰制度の設計について書かれた報告書である。我が国のエネルギー政策における「3E+S」の実現と2050年カーボンニュートラル宣言を受け、再生可能エネルギーの主力電源化に向けた取組の加速化が求められている中、地域から受け入れられ定着する再エネ事業の実現が重要な課題となっている。太陽光発電設備の急速な導入により、パネル廃棄や景観問題等の懸念が顕在化し、新たな再エネ事業の実施が困難な地域も存在することから、地域共生に取り組む優良な再エネ事業を適切に評価し普及促進するための顕彰制度の創設が必要とされた。本事業では、地域共生型再エネ事業に関する実態調査を実施し、19の先行事例についてヒアリング調査を行った結果、地域での雇用創出や調達、関連産業発展、教育機関との連携等による地域社会の産業基盤構築、防災計画との連携や設備のレジリエンス強化による地域への安定供給確保、FIT買取期間終了後の事業計画検討による長期安定的な事業実行という三つの要件が明確化された。また、6つの地方公共団体における既存の評価制度についてもヒアリング調査を実施し、制度設計の参考とした。有識者検討会を4回開催し、学術・再エネ業界・金融業界の専門家による議論を踏まえて顕彰制度の方針案を策定している。制度スキームでは、事業者からの応募を受け、自治体による評価と国による最終選考を経て顕彰する仕組みとし、地域共生の在り方が地域によって異なることから自治体の関与を重視している。審査項目は従来のFIT制度で求められる設備の安全性と住民理解を最低限の要件とし、地域共生再エネ三要件を満たすものを顕彰対象とすることが決定された。自治体向けガイドライン案では、地域ニーズの調査把握、地域共生再エネ三要件の配点比率決定、評価記入という三つの役割を自治体に求め、中長期的には自治体のキャパシティビルディングにも繋げる方向性が示されている。顕彰事業に対する支援措置として、ロゴマーク付与や資源エネルギー庁ウェブサイトでの紹介による広報効果を検討し、将来的には各種補助金申請時の加点や地元金融機関との連携、自治体既存施策との連携等の拡充も視野に入れている。
