令和2年度産業技術調査事業(産業界と大学におけるイノベーション人材の循環育成に向けた方策に関する調査)報告書
報告書概要
この報告は、日本における産業界と大学での博士人材の循環育成に関する課題と解決策について経済産業省が令和2年度に実施した調査の報告書である。
日本企業を取り巻く競争環境は技術革新と市場変化により急速に変化しており、国際競争力を維持するためには最先端の知識を理解し展開できる博士人材の産業界での活躍が不可欠となっている。しかし、OECD諸国の中で日本は製造業やサービス業において新製品・新サービスを投入する企業の割合が最も低く、博士人材の多くはアカデミアで活動しており産業界での活躍は限定的である。特にAI・IT分野では世界的な人材獲得競争が激化する一方、産業界のニーズがある分野はアカデミアで重視されていないという需給ギャップが存在している。
本調査では産業界の人材需給状況と将来ニーズを把握分析するため、産学イノベーション人材循環育成研究会を設置し、産業界と大学から12名の有識者により8回にわたって議論を実施した。研究会では博士人材の産業界での活躍促進に焦点を絞り、情報系分野及び研究成果型ベンチャーでの博士人材への需要増と包括的な産学連携の場での人材育成を解決の突破口として特定した。
産業界に対しては事業経営の転換と博士人材の多面的な評価・活用、社員の学び直しの推進が求められ、大学に対しては社会ニーズの変化への柔軟な対応と学び直しの担い手としての役割が期待されている。政府は博士人材の活躍の見える化とベンチャー企業支援による民間での競争促進、包括的な産学連携による人材育成の促進に圧倒的な政策努力を投入すべきであると提言している。今後の検討課題として専門分野による活躍状況の詳細な分析と博士人材の民間での活躍状況の実態把握が必要であるとしている。
